税務2026年2月19日

電子帳簿保存法の対応方法|2024年義務化後に必要な実務対応

はじめに

2024年1月から、電子取引データの電子保存が完全義務化されました。これまでの宥恕措置(猶予期間)は終了し、すべての事業者が電子取引データを電子的に保存する必要があります。

「うちはまだ紙で保存している」「何をすればいいかわからない」という企業は、今すぐ対応が必要です。税務調査で保存要件を満たしていないと、青色申告の承認取消しのリスクもあります。

本記事では、電子帳簿保存法の3つの区分と、それぞれの対応方法を解説します。

電子帳簿保存法の3つの区分

区分 内容 義務/任意
電子帳簿等保存 会計ソフトで作成した帳簿・書類の電子保存 任意
スキャナ保存 紙で受領した書類をスキャンして電子保存 任意
電子取引データ保存 電子的に授受した取引データの保存 義務

**最優先で対応すべきは「電子取引データ保存」**です。これだけが義務化されています。

電子取引データ保存(義務)

対象となる電子取引

取引の形態 具体例
メール添付 PDFで受信した請求書・見積書
クラウドサービス Amazon、楽天等の購入履歴、SaaSの請求書
EDI 電子データ交換
Web インターネットバンキングの取引明細
チャット Slack等で送受信した請求書・見積書
スマホアプリ 交通系ICカードの利用履歴(電子版)

重要: 紙で受け取った書類を自分でスキャンしたものは「電子取引」ではなく「スキャナ保存」の区分です。

保存要件

電子取引データの保存には、以下の要件を満たす必要があります。

要件 内容
真実性の確保 改ざん防止措置を講じること
可視性の確保 検索できる状態で保存すること

真実性の確保(4つの方法から1つ選択)

方法 内容 難易度
① タイムスタンプ付与(受領側) 受領後速やかにタイムスタンプを付与
② タイムスタンプ付与(送付側) 送付者がタイムスタンプを付与 低(相手任せ)
③ 訂正・削除の履歴が残るシステム システムで改ざん防止 中(対応システムが必要)
④ 事務処理規程の備付け 社内規程を作成し遵守 低(最も手軽)

中小企業の多くは④の事務処理規程で対応しています。 規程のテンプレートは国税庁のサイトからダウンロードできます。

可視性の確保(検索要件)

検索項目 内容
取引年月日 日付で検索できること
取引金額 金額で検索できること
取引先名 相手先で検索できること

検索要件を満たす方法:

方法 内容 適した企業
専用システム 電子帳簿保存法対応のクラウドサービス 取引量が多い企業
ファイル名ルール 「20260220_100000_○○商事.pdf」等 中小企業
Excel管理 索引簿を作成してファイルと紐づけ 小規模企業

ファイル名で管理する場合の命名規則例:

{取引年月日}_{金額}_{取引先名}.pdf
例:20260220_100000_ABC商事.pdf

売上高5,000万円以下の簡易措置

基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者は、検索要件が不要になります。ただし以下の条件があります。

条件 内容
出力可能 税務調査時にダウンロード・印刷できること
整然・明瞭 整理された状態で保存していること

つまり、フォルダに日付順で保存し、求められたら出力できればOKです。

スキャナ保存(任意)

対象となる書類

紙で受領・作成した書類をスキャンして電子保存する制度です。

区分 対象書類
重要書類 契約書、請求書、納品書、領収書
一般書類 見積書、注文書、検収書

スキャナ保存の要件

要件 重要書類 一般書類
解像度 200dpi以上 200dpi以上
カラー カラー グレースケール可
タイムスタンプ 必要(入力期限あり) 必要
入力期限 最長約2ヶ月+7営業日 制限なし
大きさ情報 A4以下は不要 不要
版についての情報 必要 不要
検索要件 必要 必要
帳簿との関連付け 必要 不要

スキャナ保存のメリット

メリット 内容
紙の保管コスト削減 倉庫・キャビネットが不要に
検索性の向上 電子データなら瞬時に検索可能
テレワーク対応 どこからでもアクセス可能
原本廃棄 要件を満たせば紙の原本を破棄できる

電子帳簿等保存(任意)

対象

会計ソフトで作成した帳簿(仕訳帳、総勘定元帳等)や書類(決算書等)を電子データのまま保存する制度です。

優良な電子帳簿の要件

「優良な電子帳簿」の要件を満たすと、過少申告加算税が5%軽減される特典があります。

要件 内容
訂正・削除の履歴 修正前のデータが残ること
相互関連性 帳簿間の関連性が確認できること
検索機能 日付・金額・勘定科目で検索可能
ディスプレイ・プリンタ 画面表示・印刷ができること

freeeやマネーフォワード等の主要クラウド会計ソフトは、JIIMA認証を取得しており、要件を満たしています。

対応の優先順位

優先度 対応項目 対象
最優先 電子取引データの保存体制構築 全事業者
推奨 事務処理規程の整備 全事業者
任意 スキャナ保存の導入 ペーパーレス化を進めたい企業
任意 優良な電子帳簿への対応 加算税軽減を受けたい企業

具体的な対応ステップ

ステップ1:電子取引の棚卸し

自社で発生している電子取引をすべて洗い出します。

確認項目 具体例
メールで受信する請求書 取引先ごとにリストアップ
クラウドサービスの領収書 AWS、Google、SaaS等
ECサイトの購入明細 Amazon、楽天、ASKUL等
インターネットバンキング 振込明細、入出金明細
その他 電子契約(クラウドサイン等)

ステップ2:保存方法を決める

企業規模 推奨方法
小規模(〜10名) ファイル名ルール + フォルダ管理
中規模(10〜50名) クラウドストレージ + 命名規則
大規模(50名〜) 電子帳簿保存法対応の専用システム

ステップ3:事務処理規程を作成する

国税庁の公表しているテンプレートをベースに、自社の実態に合わせて作成します。

規程に含めるべき内容:

  • 対象となるデータの範囲
  • 保存場所・保存方法
  • 責任者の指定
  • 訂正・削除の手続き
  • 定期的なチェック体制

ステップ4:運用ルールを周知する

全従業員に対して、以下を周知します。

項目 内容
保存すべきデータ 何を保存するか
保存方法 ファイル名のルール、保存先フォルダ
保存期限 受領後速やかに保存
やってはいけないこと 電子データの削除、ファイル名変更(保存後)

よくある失敗

1. 電子取引データを印刷して紙で保存

2024年以降、電子取引データを紙に出力して保存することは認められません。電子データは電子のまま保存する必要があります。

2. メールの請求書PDFをメールボックスに放置

メールで受信しただけでは「整然・明瞭に保存」とは言えません。所定のフォルダに移動し、検索できる状態にする必要があります。

3. ファイル名がバラバラ

「請求書.pdf」「invoice_202602.pdf」など、ファイル名に統一ルールがないと検索要件を満たしません。

4. 事務処理規程を作っていない

タイムスタンプや対応システムを使わない場合、事務処理規程の備付けが必須です。規程がないと改ざん防止要件を満たせません。

5. 途中で運用が崩れる

最初はルール通り運用していても、忙しくなると対応が後回しになりがち。月次で保存状況をチェックする仕組みを入れましょう。

まとめ

ポイント 内容
義務化 電子取引データの電子保存は全事業者が対象
最も手軽な方法 事務処理規程 + ファイル名ルール + フォルダ管理
保存要件 真実性の確保(改ざん防止)+ 可視性の確保(検索可能)
注意 電子データの紙出力保存はNG
小規模事業者 売上5,000万円以下なら検索要件が免除

電子帳簿保存法への対応は、単なる法令対応ではなく、経理業務のDX化の第一歩です。この機会にペーパーレス化を進め、業務効率を向上させましょう。

電子帳簿保存法の対応やペーパーレス化についてお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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タグ:電子帳簿保存法電子取引スキャナ保存税務DX

この記事を書いた人

NextFin会計事務所 税理士

税理士。スタートアップ・成長企業の財務戦略、M&A内製化、資金調達を専門とする。大手コンサルティングファームでのM&Aアドバイザリー経験を経て、NextFin会計事務所を設立。

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