M&A2026年2月16日

事業承継の基本|親族承継・M&A・MBOの3つの選択肢

はじめに

中小企業庁の調査によると、日本の中小企業経営者の平均年齢は年々上昇しており、後継者不在率は約6割に達しています。

事業承継は「いつかやらなければ」と思いながらも先延ばしにされがちですが、準備には5〜10年かかるとされています。選択肢を理解し、早めに動き出すことが成功の鍵です。

本記事では、事業承継の3つの方法と、それぞれの進め方を解説します。

事業承継の3つの方法

概要比較

項目 親族承継 従業員承継(MBO) 第三者承継(M&A)
後継者 子・親族 役員・従業員 外部の企業・個人
割合 約35% 約20% 約45%
期間 5〜10年 3〜5年 1〜2年
株式移転 贈与・相続・売買 買取(資金調達が課題) 売却
経営の連続性 高い 高い 低〜中
対価 低い(税制優遇あり) 中程度 高い(市場価格)

1. 親族承継

最も伝統的な方法で、子や親族に事業を引き継ぎます。

メリット:

  • 社内外の理解を得やすい
  • 後継者教育に十分な時間をかけられる
  • 事業承継税制の活用で税負担を軽減できる
  • 所有と経営の一体性を維持できる

デメリット:

  • 後継者に経営能力があるとは限らない
  • 親族間の争いに発展するリスク
  • 後継者本人の意思を確認する必要がある
  • 相続税・贈与税の負担

進め方:

フェーズ 期間 内容
後継者の選定 適性の見極め、本人の意思確認
後継者教育 5〜10年 社内各部門の経験、外部企業での修行
権限の移譲 3〜5年 段階的に経営権限を移譲
株式の移転 1〜3年 贈与・売買による株式移転
代表交代 正式な代表者交代

2. 従業員承継(MBO)

役員や従業員が株式を買い取り、経営を引き継ぐ方法です。

メリット:

  • 事業をよく知る人材が後継者となる
  • 従業員や取引先の安心感が大きい
  • 企業文化の連続性を保てる

デメリット:

  • 株式買取の資金調達が課題
  • 個人保証の引き継ぎ問題
  • 経営者としての能力が求められる

資金調達の方法:

方法 内容
銀行融資 後継者個人または新設会社で借入
LBO(レバレッジドバイアウト) 対象会社の資産を担保に借入
投資ファンド ファンドと共同で買収
分割払い 現経営者に対して分割で支払い
種類株式の活用 議決権のない株式を活用

3. 第三者承継(M&A)

外部の企業や個人に会社を売却する方法です。

メリット:

  • 後継者不在でも事業を存続できる
  • 株式売却による創業者利益の確保
  • 買い手企業のリソースで事業を成長させられる

デメリット:

  • 企業文化の変化
  • 従業員の雇用条件変更の可能性
  • 適切な買い手を見つけるまでに時間がかかる
  • 仲介手数料等のコスト

M&Aによる承継の流れ:

ステップ 内容 期間
1. 方針決定 M&Aで承継する方針を決定 1ヶ月
2. アドバイザー選定 M&A仲介会社・FAの選定 1ヶ月
3. 企業価値評価 バリュエーションの実施 1ヶ月
4. 買い手探し 候補先への打診・マッチング 3〜6ヶ月
5. 基本合意 LOI(基本合意書)の締結 1ヶ月
6. デューデリジェンス 買い手による調査 1〜2ヶ月
7. 最終契約・クロージング 株式譲渡契約の締結と実行 1ヶ月

事業承継税制

概要

事業承継税制は、後継者が先代経営者から株式を贈与・相続した場合に、贈与税・相続税の納税を猶予・免除する制度です。

一般措置と特例措置

項目 一般措置 特例措置
対象株式 発行済株式の2/3まで 全株式
猶予割合 贈与100%、相続80% 贈与100%、相続100%
後継者の人数 1人 最大3人
適用期限 期限なし 2028年12月末まで(特例承継計画の提出が必要)
雇用確保要件 5年平均で8割維持 実質撤廃(届出で対応)

特例措置の方が大幅に有利ですが、適用期限があるため早めの対応が必要です。

適用の要件

要件 内容
先代経営者 会社の代表者であったこと
後継者 代表者に就任すること、筆頭株主になること
会社 中小企業であること、上場していないこと
継続要件 株式を保有し続けること、事業を継続すること

注意点

  • 猶予であり免除ではない(一般措置の場合、後継者が死亡するまで猶予が続く)
  • 要件を満たさなくなると猶予税額の全額 + 利子税を一括納付
  • 認定経営革新等支援機関の指導・助言が必要

事業承継でよくある失敗

1. 準備が遅すぎる

「まだ元気だから」と先延ばしにしていると、突然の健康問題で準備が間に合わなくなります。60歳を目安に準備を始めるのが理想です。

2. 後継者教育が不十分

株式だけ渡しても、経営能力がなければ事業は衰退します。社内の主要部門を経験させ、外部での経験も積ませる計画的な育成が必要です。

3. 株式が分散している

過去の相続や贈与で株式が複数の親族に分散していると、承継時に全株式を集約するのが困難になります。早い段階で株式の集約を進めましょう。

4. 個人保証の問題

中小企業の場合、経営者が個人保証をしているケースが多くあります。承継時に個人保証の解除または引き継ぎの交渉が必要です。

5. 従業員・取引先への説明が不十分

承継の発表が突然だと、従業員の不安や取引先の動揺を招きます。段階的に、適切なタイミングで説明することが重要です。

まとめ

ポイント 内容
3つの方法 親族承継、従業員承継(MBO)、第三者承継(M&A)
準備期間 親族承継は5〜10年、M&Aは1〜2年
税制優遇 事業承継税制の特例措置は2028年末まで
開始時期 60歳を目安に準備を始める
最大の失敗 準備の先延ばし

事業承継は経営者人生最大の意思決定です。自社に最適な方法を選び、計画的に準備を進めましょう。

NextFin会計事務所では、事業承継の方針策定からM&Aの実行支援まで一貫してサポートしています。「まず選択肢を整理したい」という段階でも、お気軽にご相談ください。

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タグ:事業承継M&AMBO事業承継税制後継者

この記事を書いた人

NextFin会計事務所 税理士

税理士。スタートアップ・成長企業の財務戦略、M&A内製化、資金調達を専門とする。大手コンサルティングファームでのM&Aアドバイザリー経験を経て、NextFin会計事務所を設立。

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