社外CFO2026年2月16日

資金繰り表の作り方|キャッシュフロー管理で黒字倒産を防ぐ

はじめに

「売上は順調なのに、なぜか手元にお金がない」——成長企業で最も多い悩みの一つです。

利益が出ていても、売掛金の回収が遅れたり、在庫が膨らんだりすれば、現金は不足します。最悪の場合、利益が出ているのに資金が回らなくなる黒字倒産に陥ることもあります。

これを防ぐのが資金繰り表です。本記事では、資金繰り表の作り方から日常的なキャッシュフロー管理の方法まで解説します。

資金繰り表とは

資金繰り表とは、一定期間の現金の入出金を予測・管理するための表です。P/L(損益計算書)が「利益」を管理するのに対し、資金繰り表は「現金」を管理します。

P/Lと資金繰り表の違い

項目 P/L(損益計算書) 資金繰り表
管理対象 利益(収益 - 費用) 現金(入金 - 出金)
計上タイミング 発生主義(取引発生時) 現金主義(入出金時)
売上の扱い 請求時に計上 入金時に計上
減価償却 費用として計上 現金の動きなし
借入金 P/Lに影響しない 入金(借入時)・出金(返済時)
設備投資 減価償却で分割計上 支払時に全額出金

重要な原則: 利益 ≠ キャッシュ。この違いを理解することが資金管理の第一歩です。

なぜ黒字倒産が起きるのか

黒字倒産の典型的なパターンは以下の通りです。

パターン 具体例
売掛金の回収遅延 売上は計上済みだが、入金が3ヶ月後
在庫の積み上がり 仕入代金は支払済みだが、在庫として滞留
急成長による運転資金不足 売上増に伴い仕入が先行、入金が追いつかない
設備投資の過大 利益の範囲を超えた投資でキャッシュが枯渇
季節変動 繁忙期の仕入が集中し、閑散期にキャッシュ不足

資金繰り表のテンプレート

基本構成

資金繰り表は営業収支・財務収支・経常外収支の3区分で構成します。

区分 内容 具体例
営業収支 本業の入出金 売上入金、仕入支払、人件費、経費
財務収支 借入・返済の入出金 新規借入、借入返済、利息支払
経常外収支 臨時的な入出金 設備投資、資産売却、増資

月次資金繰り表の例

項目 4月 5月 6月
前月繰越残高 1,000 800 650
【営業収支】
現金売上 200 200 200
売掛金回収 1,500 1,600 1,700
営業収入 合計 1,700 1,800 1,900
仕入支払 -800 -850 -900
人件費 -600 -600 -600
経費支払 -300 -300 -300
営業支出 合計 -1,700 -1,750 -1,800
営業収支 0 50 100
【財務収支】
新規借入 0 0 0
借入返済 -150 -150 -150
財務収支 -150 -150 -150
【経常外収支】
設備投資 -50 0 0
経常外収支 -50 0 0
当月収支 -200 -100 -50
翌月繰越残高 800 700 650

(単位:万円)

資金繰り表の作り方(5ステップ)

ステップ1:前月繰越残高を確認する

銀行口座の残高を確認し、全口座の合計残高を前月繰越残高として記入します。

注意点:

  • 定期預金は別管理(すぐに使えないため)
  • 複数口座がある場合はすべて合算
  • 月初時点の実際の残高を使用する

ステップ2:営業収入を予測する

売上の入金予定を記入します。

売掛金の回収予測:

  1. 得意先ごとの回収サイト(締め日・支払日)を確認
  2. 請求書発行済みの売掛金から、入金予定月を算出
  3. 新規受注分は、受注予測 × 回収サイトで入金月を予測

回収サイトの例:

パターン 締め日 支払日 回収サイト
月末締め翌月末払い 月末 翌月末 30日
月末締め翌々月末払い 月末 翌々月末 60日
20日締め翌月末払い 20日 翌月末 40日

ステップ3:営業支出を予測する

仕入、人件費、経費の支払予定を記入します。

項目 予測方法
仕入支払 発注済み分は確定、新規分は売上予測から逆算
人件費 固定(給与) + 変動(残業代・賞与)
家賃・リース 契約書ベースで固定
広告宣伝費 予算ベース
その他経費 過去実績の平均値

ステップ4:財務収支を記入する

借入金の返済スケジュールと、新規借入の予定を記入します。

確認すべきこと:

  • 各借入金の返済額・返済日
  • 手形の期日
  • 利息の支払日・支払額
  • 新規借入の入金予定

ステップ5:経常外収支を記入する

設備投資、資産売却、増資など、臨時的な入出金を記入します。

よくある経常外収支:

  • 設備購入(PC、車両、機械等)
  • 保証金・敷金の支払
  • 保険金の入金
  • 増資による入金
  • 補助金・助成金の入金

資金繰り管理の実務ポイント

月次と週次の使い分け

管理頻度 対象期間 目的
月次 6〜12ヶ月先まで 中期的な資金計画、借入の必要性判断
週次 4〜8週間先まで 直近の資金ショート回避、入出金の管理
日次 当日〜1週間 口座残高の確認、緊急対応

推奨: 月次資金繰り表を基本とし、資金が逼迫している時期は週次管理を追加する。

資金ショートの予兆

以下のサインが見られたら、早めに対策を講じましょう。

予兆 具体的なサイン
売掛金の増加 売上は伸びているが、売掛金の回転期間が長期化
在庫の増加 在庫回転日数が前年比で悪化
支払いの遅延 仕入先への支払いが遅れがちになっている
借入残高の増加 運転資金の借入が増え続けている
月末の綱渡り 毎月末に資金が逼迫し、入金を待って支払う状態

資金ショートを防ぐ対策

対策 内容 効果
回収サイトの短縮 支払条件の見直し交渉 入金を早める
支払サイトの延長 仕入先との条件見直し 出金を遅らせる
在庫の圧縮 適正在庫の管理、不良在庫の処分 資金の固定化を防ぐ
借入枠の確保 当座貸越枠、コミットメントラインの設定 緊急時の備え
ファクタリング 売掛金の早期現金化 即座に資金化
増資 エクイティによる資本増強 返済不要の資金確保

資金繰り管理でよくある失敗

1. P/Lの利益だけを見ている

「利益が出ているから大丈夫」は危険な思い込みです。利益とキャッシュは別物であることを常に意識しましょう。

2. 楽観的な売上予測

「来月は売上が上がるはず」という希望的観測で資金繰り表を作ると、予測が外れた時にキャッシュが足りなくなります。保守的なシナリオで作成しましょう。

3. 税金の支払いを忘れる

法人税、消費税、源泉所得税などの税金は、決算後にまとまった金額が必要になります。特に消費税の中間納付は見落としがちです。

4. 季節変動を考慮しない

業種によっては売上や仕入に大きな季節変動があります。年間を通じた資金繰りを把握し、閑散期に備えた資金確保が必要です。

5. 更新を怠る

資金繰り表は作って終わりではなく、毎月(または毎週)実績を反映して更新することが重要です。予実の差異を分析し、予測の精度を上げていきましょう。

まとめ

ポイント 内容
基本原則 利益 ≠ キャッシュ。資金繰り表で現金を管理する
テンプレート 営業収支・財務収支・経常外収支の3区分
管理頻度 月次を基本に、逼迫時は週次を追加
予兆の把握 売掛金増加、在庫増加、支払遅延に注意
最大の失敗 楽観的な予測と更新の怠り

資金繰り管理は経営の生命線です。P/Lだけでなくキャッシュの動きを常に把握し、先手を打った対策を講じましょう。

NextFin会計事務所では、社外CFOとして資金繰り管理の仕組み構築から運用まで伴走しています。「資金繰りが不安」「キャッシュフロー管理を始めたい」という方は、お気軽にご相談ください。

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タグ:資金繰りキャッシュフロー資金繰り表黒字倒産経営管理

この記事を書いた人

NextFin会計事務所 税理士

税理士。スタートアップ・成長企業の財務戦略、M&A内製化、資金調達を専門とする。大手コンサルティングファームでのM&Aアドバイザリー経験を経て、NextFin会計事務所を設立。

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