社外CFO2026年2月4日

管理会計の導入ステップ|経営判断に使える数字の作り方

はじめに

「決算書は作っているけど、経営判断に活かせていない」——多くの成長企業が抱える課題です。

税務申告のための財務会計と、経営判断のための管理会計は、目的も作り方もまったく異なります。しかし、多くの企業では財務会計しか行っておらず、「数字を見ても何をすればいいかわからない」状態に陥っています。

本記事では、管理会計の基本から導入ステップ、そして経営判断に使える数字の作り方を解説します。

管理会計と財務会計の違い

項目 財務会計 管理会計
目的 外部報告(税務署・株主・銀行) 内部の経営判断
ルール 会計基準に準拠(義務) 自由に設計できる(任意)
対象期間 年次・四半期 月次・週次・日次も可能
視点 会社全体 事業部・プロジェクト・商品別
タイミング 期末に確定 リアルタイムに近い速報
使う人 外部のステークホルダー 経営者・マネージャー

**財務会計は「過去の記録」、管理会計は「未来の意思決定」**のためにあります。

なぜ管理会計が必要なのか

1. 事業別の収益性が見える

全社のP/Lだけでは、「どの事業が儲かっていて、どの事業が足を引っ張っているか」がわかりません。管理会計を導入すれば、事業部ごと・プロダクトごとの損益が明確になります。

2. 早期に問題を発見できる

月次・週次で数字を追うことで、売上の減少や原価の上昇を早期にキャッチできます。年次の決算でしか数字を見ない企業は、問題に気づいた時にはすでに手遅れということも。

3. 投資判断の精度が上がる

「この事業に追加投資すべきか」「新規事業は採算が取れるか」——こうした判断には、正確な原価計算と収益予測が必要です。管理会計がその基盤となります。

4. 組織のアカウンタビリティが生まれる

各部門に予算を設定し、予実管理を行うことで、各マネージャーが数字に対する責任を持つ文化が生まれます。これは組織の成長に不可欠な要素です。

管理会計の導入ステップ

ステップ1:月次決算を早期化する

管理会計の土台は正確で迅速な月次決算です。

目標:翌月10営業日以内に月次決算を確定する

具体的な施策:

  • 売上・仕入の計上基準を明確化(発生主義の徹底)
  • 経費精算のルールと締め日を設定
  • 減価償却・前払費用などの月次按分を自動化
  • 会計ソフトと銀行口座の自動連携

月次決算が翌月末にしか出てこない状態では、管理会計は機能しません。まずはスピードを上げましょう。

ステップ2:セグメント別の損益を作る

全社の数字を事業部・プロダクト・顧客セグメント別に分解します。

やるべきこと:

  1. セグメントの定義

    • 事業部別(A事業、B事業...)
    • プロダクト別(SaaS、コンサル、受託...)
    • 顧客セグメント別(エンタープライズ、SMB...)
  2. 収益の配分

    • 売上は直接紐づくセグメントに計上
    • 共通収益がある場合は合理的な配分基準を設定
  3. 費用の配分

    • 直接費はそのまま各セグメントに計上
    • 間接費(家賃、管理部門人件費等)は配賦基準を設定
    • 配賦基準の例:人数比、売上比、面積比

注意点: 配賦基準は完璧である必要はありません。「だいたい合っている」レベルで十分です。精緻さを追求しすぎると運用が回らなくなります。

ステップ3:KPIを設計する

財務数値だけでなく、事業を動かすドライバーとなるKPIを設計します。

SaaS企業のKPI例

KPI 計算方法 見るべきポイント
MRR 月次経常収益 成長率と推移
チャーンレート 解約顧客数 ÷ 全顧客数 月次2%以下が目安
LTV 平均単価 × 平均継続期間 CACの3倍以上が理想
CAC 営業・マーケ費用 ÷ 新規顧客数 LTV/CACの比率
NRR (前月MRR + 拡張 - 縮小 - 解約) ÷ 前月MRR 100%超が成長の証

受託・コンサル企業のKPI例

KPI 計算方法 見るべきポイント
稼働率 請求可能時間 ÷ 総労働時間 70〜80%が目安
プロジェクト粗利率 (売上 - 直接原価) ÷ 売上 案件ごとの収益性
平均単価 売上 ÷ 請求時間 単価の推移
パイプライン 商談中の案件金額合計 将来の売上見通し
リピート率 既存顧客からの受注比率 顧客満足度の指標

ステップ4:予算を策定する

KPIと連動した年間予算を策定し、月次で予実管理を行います。

予算策定の流れ:

  1. トップダウン目標の設定

    • 経営陣が売上・利益の年間目標を設定
    • 中期計画との整合性を確認
  2. ボトムアップでの積み上げ

    • 各事業部が達成計画を策定
    • 必要なリソース(人員・投資)を見積もり
  3. すり合わせと確定

    • トップダウンとボトムアップの差異を議論
    • 最終的な予算を確定
  4. 月次への分解

    • 年間予算を月次に分解
    • 季節変動がある場合は月ごとに調整

ステップ5:予実管理のサイクルを回す

予算を作って終わりではなく、毎月の予実差異を分析し、アクションにつなげることが重要です。

月次レビューで確認すべきポイント:

  1. 予実差異の把握 — 予算と実績の差額を確認
  2. 差異の原因分析 — なぜズレたのか(数量要因 or 単価要因 or 時期ずれ)
  3. 着地見通しの更新 — 年間着地をどう見るか
  4. アクションプランの策定 — 差異を埋めるために何をするか

管理会計を定着させるコツ

シンプルに始める

最初から完璧な管理会計を目指すと、複雑すぎて誰も見なくなります。まずは最も重要な3〜5個のKPIに絞って始めましょう。

経営会議で使う

管理会計の数字を毎月の経営会議のアジェンダに組み込むことが、定着への最短ルートです。「数字を見て議論し、意思決定する」というサイクルを習慣化しましょう。

ダッシュボードを作る

Excelの表だけでは見る気が起きません。Googleスプレッドシートやダッシュボードツールでビジュアル化することで、数字への意識が格段に上がります。

担当者を決める

管理会計の集計・分析・報告の担当者を明確にします。「みんなでやる」は「誰もやらない」になりがちです。

まとめ

管理会計の導入は、以下の5ステップで進めます:

ステップ 内容 期間の目安
1 月次決算の早期化 1〜2ヶ月
2 セグメント別損益の作成 1〜2ヶ月
3 KPIの設計 2〜4週間
4 予算の策定 1〜2ヶ月
5 予実管理サイクルの構築 継続的

管理会計は一度作って終わりではなく、運用しながら改善していくものです。完璧を目指すより、まず始めて、使いながら磨いていきましょう。

NextFin会計事務所では、社外CFOとして管理会計の設計から運用定着まで伴走しています。「今の決算書では経営判断ができない」とお感じの方は、ぜひご相談ください。

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タグ:管理会計KPI予実管理月次決算経営判断

この記事を書いた人

NextFin会計事務所 税理士

税理士。スタートアップ・成長企業の財務戦略、M&A内製化、資金調達を専門とする。大手コンサルティングファームでのM&Aアドバイザリー経験を経て、NextFin会計事務所を設立。

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