社外CFO2026年2月6日

IPO準備はいつから?必要な体制と進め方

はじめに

「IPOを目指したいが、何から手をつければいいかわからない」——これは多くのスタートアップ経営者が抱える共通の悩みです。

IPO準備は上場の3年前から始めるのが一般的です。しかし準備すべき項目は多岐にわたり、体制づくりや内部統制の整備には想像以上の時間がかかります。

本記事では、IPO準備のタイムライン、必要な体制、そしてフェーズごとの具体的な進め方を解説します。

IPO準備はいつから始めるべきか

結論:上場の3年前(N-3期)から

日本の証券取引所では、上場審査において直前2期間(N-2期・N-1期)の財務諸表が求められます。この2期間は監査法人による会計監査を受ける必要があるため、遅くとも上場の3年前には準備を開始すべきです。

時期 名称 主な活動
N-3期 準備期間 体制構築、監査法人選定、課題の洗い出し
N-2期 直前前期 監査開始、内部統制整備、ガバナンス強化
N-1期 直前期 内部統制の運用、主幹事証券との連携強化
N期 申請期 上場申請、審査対応、ロードショー

早すぎるということはない

実際には、N-3期より前から意識的に準備を進めておくことが理想です。特に以下の点は早期に着手しておくと後々楽になります:

  • 資本政策の設計 — 株主構成や持株比率の最適化
  • 会計基準の整備 — 税務会計から企業会計への移行
  • 労務管理の適正化 — 未払残業代や36協定の整備

IPO準備に必要な体制

1. CFO(最高財務責任者)

IPO準備の中心となる存在です。資本政策の策定、監査法人・証券会社との窓口、開示資料の作成などを統括します。

専任のCFOを採用するのが理想ですが、スタートアップの段階では社外CFOを活用する方法も有効です。上場経験のある社外CFOであれば、準備の全体像を把握した上で効率的に進めることができます。

2. 管理部門の強化

経理・財務・法務・人事の管理部門を強化する必要があります。

機能 最低限必要な人員 主な役割
経理 2名以上 月次決算、税務申告、監査対応
財務 1名以上 資金繰り管理、銀行対応
法務 1名以上 契約審査、コンプライアンス
人事・労務 1名以上 労務管理、規程整備
内部監査 1名以上 内部統制の評価・改善

3. 外部専門家チーム

社内体制に加え、以下の外部専門家との連携が必要です:

  • 監査法人 — 会計監査の実施(N-2期から必須)
  • 主幹事証券会社 — 上場審査のサポート、引受業務
  • 弁護士 — 法的リスクの洗い出し、契約書レビュー
  • 税理士・会計事務所 — 税務アドバイス、会計処理の支援
  • 証券代行 — 株式事務の代行
  • IPOコンサルタント — 全体のプロジェクト管理

フェーズ別の進め方

N-3期(準備期間):基盤を作る

この時期は、IPO準備の基盤となる体制と仕組みを整えるフェーズです。

やるべきこと:

  1. IPOプロジェクトチームの組成

    • 経営陣のコミットメント確認
    • プロジェクトリーダー(CFOまたは社外CFO)の選任
    • 準備スケジュールの策定
  2. 監査法人の選定

    • ショートレビュー(予備調査)の実施
    • 課題の洗い出しと対応計画の策定
    • 監査契約の締結
  3. 資本政策の策定

    • 現在の株主構成の整理
    • 上場時の想定時価総額と調達額の試算
    • ストックオプションの設計
  4. 会計・経理体制の整備

    • 会計ソフトの導入・見直し
    • 月次決算の早期化(翌月15日以内が目標)
    • 原価計算制度の構築(製造業の場合)
  5. 規程類の整備

    • 取締役会規程、職務権限規程
    • 経理規程、購買規程
    • 情報セキュリティ規程

N-2期(直前前期):仕組みを動かす

監査が始まる重要な年度です。整備した仕組みを実際に運用し始めます

やるべきこと:

  1. 会計監査への対応

    • 期首残高の確定
    • 会計方針の確定と適用
    • 四半期ごとのレビュー対応
  2. 内部統制の整備

    • 業務フローの文書化
    • リスクコントロールマトリクスの作成
    • ITガバナンスの整備
  3. ガバナンス体制の構築

    • 社外取締役の選任
    • 監査役会(または監査等委員会)の設置
    • 取締役会の運営ルール確立
  4. コンプライアンス体制

    • 内部通報制度の整備
    • 反社チェック体制の構築
    • 関連当事者取引の整理

N-1期(直前期):仕上げる

上場申請の直前年度です。内部統制を安定的に運用し、審査に耐えうる状態を作ります

やるべきこと:

  1. 内部統制の運用と評価

    • 運用テストの実施
    • 不備の改善
    • 内部監査の本格実施
  2. 主幹事証券会社との連携強化

    • 引受審査への対応開始
    • Ⅰの部(上場申請書類)のドラフト作成
    • 質疑応答の準備
  3. 予算管理の精度向上

    • 予実管理の仕組みを確立
    • 業績予想の精度を証明
    • 中期経営計画の策定
  4. 開示体制の整備

    • 適時開示の社内フロー構築
    • IR資料のテンプレート準備
    • スポークスパーソンのトレーニング

N期(申請期):上場を実現する

いよいよ上場申請の年度です。

やるべきこと:

  1. 上場申請

    • 申請書類の最終化と提出
    • 取引所による審査対応
    • ヒアリングへの準備と対応
  2. ロードショー

    • 機関投資家向けのプレゼンテーション
    • 公募・売出価格の決定
    • ブックビルディング

IPO準備でよくある失敗

1. 準備開始が遅すぎる

「来年上場したいので今から準備を始めたい」——これでは間に合いません。監査法人によるショートレビューだけでも数ヶ月かかることがあります。

2. 管理部門の人材不足

営業や開発には投資するが、管理部門は後回しにしがちです。IPO準備には経理・法務の専門人材が不可欠です。

3. 内部統制を形式的に済ませる

「書類を揃えればいい」という認識は危険です。審査では実際に運用されているかが問われます。形だけの内部統制は審査で見抜かれます。

4. 資本政策の失敗

上場前に株式を分散させすぎたり、不利な条件で投資家を入れてしまうと、後から修正することが困難です。資本政策は最初の設計が極めて重要です。

まとめ

IPO準備は3年間のプロジェクトです。成功の鍵は、早期に着手し、適切な体制を構築し、計画的に進めることです。

ポイント 内容
開始時期 上場の3年前(N-3期)から
最重要人材 CFO(社外CFOの活用も有効)
最初にやること 監査法人のショートレビュー
成功の鍵 内部統制の「運用」を重視

「IPOを目指すか迷っている」段階でも、早めに専門家に相談することで、効率的な準備計画を立てることができます。

NextFin会計事務所では、社外CFOとしてIPO準備の全体統括を行っています。「まず何をすべきか」のご相談から、お気軽にお問い合わせください。

社外CFO支援サービスの詳細はこちら

関連記事

タグ:IPO上場準備内部統制社外CFO監査法人

この記事を書いた人

NextFin会計事務所 税理士

税理士。スタートアップ・成長企業の財務戦略、M&A内製化、資金調達を専門とする。大手コンサルティングファームでのM&Aアドバイザリー経験を経て、NextFin会計事務所を設立。

まずは無料相談から始めませんか?

貴社の課題をお聞かせください。最適なソリューションをご提案いたします。

無料相談を申し込む