はじめに
スタートアップにとって、資金調達は成長の生命線です。しかし「VCから調達すべきか、銀行融資にすべきか」という判断は、会社の将来を左右する重要な意思決定です。
この記事では、エクイティ(株式による調達)とデット(融資による調達)の違いを整理し、フェーズごとにどう使い分けるべきかを解説します。
エクイティファイナンスとは
エクイティファイナンスとは、新株を発行して投資家から資金を調達する方法です。VC(ベンチャーキャピタル)やエンジェル投資家からの出資がこれにあたります。
エクイティのメリット
- 返済義務がない — 融資と違い、毎月の返済が発生しない
- 大きな金額を調達できる — 事業の成長性次第で数千万〜数十億円も可能
- 投資家のネットワークを活用できる — VCの持つ人脈・ノウハウが使える
- 信用力の向上 — 有名VCからの出資は対外的な信用にもなる
エクイティのデメリット
- 株式の希薄化 — 発行した分だけ創業者の持株比率が下がる
- 経営への関与 — 株主として取締役会に参加し、意思決定に影響力を持つ
- 高い期待リターン — VCはIPOやM&Aによるエグジットを前提としている
- 調達に時間がかかる — デューデリジェンスや交渉に数ヶ月かかることも
デットファイナンスとは
デットファイナンスとは、金融機関や投資家から融資を受けて資金を調達する方法です。銀行融資、日本政策金融公庫、社債発行などが含まれます。
デットのメリット
- 株式の希薄化がない — 持株比率を維持したまま資金調達できる
- 経営権を守れる — 融資元が経営に口を出すことは基本的にない
- 金利が明確 — 返済額が予測可能で、財務計画を立てやすい
- 調達スピードが速い — 制度融資なら数週間〜1ヶ月で実行されることも
デットのデメリット
- 返済義務がある — 売上が立たなくても毎月返済が発生する
- 担保・保証が必要な場合がある — 特に銀行融資では代表者保証を求められることが多い
- 調達額に上限がある — 信用力や担保に応じた範囲に限定される
- 赤字企業は借りにくい — スタートアップ初期は審査が通りにくい
エクイティとデットの比較
| 項目 | エクイティ | デット |
|---|---|---|
| 返済義務 | なし | あり |
| 株式の希薄化 | あり | なし |
| 経営への関与 | あり(株主として) | なし(基本的に) |
| 調達可能額 | 大きい(成長性次第) | 限定的(信用力次第) |
| 調達スピード | 遅い(数ヶ月) | 速い(数週間〜) |
| 適したフェーズ | シード〜シリーズ | PMF後〜黒字化後 |
| コスト | 株式の譲渡(高い) | 金利(比較的安い) |
フェーズ別:最適な資金調達の選び方
シード期(プロダクト開発段階)
この段階では売上がほとんどなく、銀行融資は難しいのが現実です。
おすすめ:エンジェル投資 + 日本政策金融公庫の創業融資
- エンジェル投資家から500万〜2,000万円のエクイティ調達
- 日本政策金融公庫の新創業融資制度で1,000万円前後のデット調達
- 両方を組み合わせることで、株式の希薄化を抑えつつ十分な資金を確保
アーリー期(PMF前後)
プロダクトが形になり、初期の顧客がつき始めた段階です。
おすすめ:VCからのシリーズA + 制度融資
- VCからの出資で数千万〜数億円を調達し、成長投資に充てる
- 売上実績ができてきたら、銀行からの融資も並行して検討
- エクイティ:デット = 7:3程度のバランスが一般的
グロース期(急成長段階)
売上が伸び、組織も拡大していく段階です。
おすすめ:シリーズB/C + ベンチャーデット + 銀行融資
- 大型のエクイティラウンドで事業拡大資金を確保
- ベンチャーデット(新株予約権付融資)も選択肢に
- 売上の安定性に応じて銀行融資の比率を高める
- 無駄な株式希薄化を防ぐため、デットを戦略的に活用
IPO準備期
上場を視野に入れた段階では、資本政策が特に重要になります。
おすすめ:デット中心 + 戦略的エクイティ
- 銀行融資やシンジケートローンで運転資金を確保
- 上場前の株式発行は最小限に抑え、時価総額の最大化を図る
- 必要に応じてプレIPOラウンドで戦略的投資家を迎え入れる
資金調達で失敗しないためのポイント
1. バリュエーションを適正に設定する
高すぎるバリュエーションでの調達は、次のラウンドでダウンラウンドになるリスクがあります。市場環境と自社の成長性を冷静に分析しましょう。
2. 資本政策表を早期に作成する
「創業者が最終的に何%の株式を保有したいか」から逆算して、各ラウンドの調達額と放出比率を計画します。これがないと、気づけば持株比率が大きく下がっているケースも。
3. 調達の目的を明確にする
「いくら必要か」だけでなく「何に使うか」「それによって何が達成されるか」を明確にしましょう。投資家にも金融機関にも、資金使途の説明は必須です。
4. 複数の選択肢を同時に検討する
エクイティかデットかの二択ではなく、両方を組み合わせるのが基本です。複数のVCや銀行と並行して交渉し、最適な条件を引き出しましょう。
まとめ
| フェーズ | 推奨する調達方法 |
|---|---|
| シード期 | エンジェル投資 + 創業融資 |
| アーリー期 | VC(シリーズA)+ 制度融資 |
| グロース期 | VC(シリーズB/C)+ ベンチャーデット + 銀行融資 |
| IPO準備期 | デット中心 + 戦略的エクイティ |
資金調達は「いくら集めるか」だけでなく、「どう集めるか」が会社の未来を決めます。自社のフェーズと目指す方向を正しく見極め、最適な調達戦略を立てましょう。
NextFin会計事務所では、資金調達の戦略立案から実行まで一貫してサポートしています。エクイティとデットの最適なバランスについて、お気軽にご相談ください。