社外CFO2026年2月16日

財務モデリングの基本|Excelで作る事業シミュレーション

はじめに

「事業計画の数字を作りたいが、どこから手をつければいいかわからない」——資金調達や新規事業の検討で必ず直面する課題です。

財務モデリングとは、事業の前提条件を数字に落とし込み、将来の財務状況をシミュレーションする技術です。Excelで作る財務モデルは、経営判断のための最も強力なツールの一つです。

本記事では、財務モデリングの基本と、実務で使える3表連動モデルの作り方を解説します。

財務モデルとは

財務モデルの目的

目的 活用場面
事業計画の数値化 資金調達、事業計画策定
投資判断 M&A、設備投資、新規事業の検討
バリュエーション DCF法による企業価値評価
感度分析 前提条件の変化が業績に与える影響の分析
資金繰り予測 キャッシュ不足のタイミングの把握

財務モデルの種類

種類 内容 用途
3表連動モデル P/L・BS・CFの3表が連動 最も基本的なモデル
DCFモデル キャッシュフローの割引現在価値 企業価値評価
LBOモデル レバレッジを活用した買収モデル M&A
月次モデル 月次ベースの詳細モデル 短期の資金繰り
ユニットエコノミクス 1顧客あたりの経済性 SaaS等のビジネスモデル検証

3表連動モデルの作り方

全体構成

財務モデルは前提条件シート出力シートに分離するのが鉄則です。

シート 内容
前提条件 売上成長率、原価率、人件費単価等の仮定
P/L(損益計算書) 売上〜当期純利益
BS(貸借対照表) 資産・負債・純資産
CF(キャッシュフロー計算書) 営業CF・投資CF・財務CF
サマリー 主要KPIのダッシュボード

ステップ1:前提条件を整理する

すべての数字の「元ネタ」を前提条件シートに集約します。

売上の前提条件(例:SaaS企業):

前提条件 Y1 Y2 Y3
新規顧客数/月 10 20 35
月額単価 5万円 5万円 5.5万円
月次チャーンレート 3% 2.5% 2%
アップセル率/月 1% 2% 3%

コストの前提条件:

前提条件 Y1 Y2 Y3
エンジニア人数 5 8 12
平均年収 700万円 700万円 750万円
広告費/月 100万円 200万円 350万円
オフィス賃料/月 30万円 50万円 80万円

ステップ2:P/L(損益計算書)を作る

前提条件からP/Lの各項目を計算します。

項目 計算ロジック
売上高 顧客数 × 月額単価 × 12
売上原価 サーバー費 + カスタマーサポート人件費
売上総利益 売上高 - 売上原価
人件費 人数 × 平均年収 × (1 + 社保負担率)
広告宣伝費 前提条件の月額 × 12
その他販管費 家賃 + ツール費 + 旅費等
営業利益 売上総利益 - 販管費合計
経常利益 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用
当期純利益 経常利益 × (1 - 実効税率)

ステップ3:BS(貸借対照表)を作る

項目 計算ロジック
現預金 CFの期末残高から逆算
売掛金 月商 × 回収サイト(月数)
前払費用 年間費用の前払い分
固定資産 取得額 - 累計減価償却
買掛金 月間仕入 × 支払サイト(月数)
未払金 人件費・経費の未払い分
借入金 前期残 + 新規借入 - 返済
資本金 前期残 + 増資額
利益剰余金 前期残 + 当期純利益

チェック: 資産合計 = 負債合計 + 純資産合計になっているか(バランスチェック)。

ステップ4:CF(キャッシュフロー計算書)を作る

間接法で作成するのが一般的です。

区分 項目 計算方法
営業CF 当期純利益 P/Lから
+ 減価償却費 非資金費用を加算
- 売掛金の増加 運転資本の変動
+ 買掛金の増加 運転資本の変動
投資CF 設備投資 固定資産の取得額
財務CF 借入金の増減 新規借入 - 返済
増資 エクイティ調達額
期末現預金 期首残高 + 営業CF + 投資CF + 財務CF

ステップ5:3表の連動を確認する

連動ポイント 内容
P/L → BS 当期純利益 → 利益剰余金に加算
P/L → CF 当期純利益 → 営業CFのスタート
BS → CF 運転資本の変動 → 営業CFに反映
CF → BS 期末現預金 → BSの現預金

感度分析の方法

シナリオ分析

3つのシナリオを作成し、前提条件を変えた場合の影響を確認します。

シナリオ 売上成長率 チャーンレート 営業利益率
ベースケース 前年比50%成長 月次2% -10%
アップサイド 前年比80%成長 月次1.5% 5%
ダウンサイド 前年比20%成長 月次3% -30%

トルネードチャート

各前提条件を±10〜20%変化させた場合に、最も影響が大きい変数を特定します。

前提条件 +20%変化時の営業利益への影響
月額単価 +5,000万円
新規顧客数 +3,000万円
チャーンレート -2,500万円
エンジニア人数 -2,000万円
広告費 -1,000万円

影響が大きい変数ほど、前提条件の精度が重要です。

モデル作成のベストプラクティス

構造のルール

ルール 内容
入力と計算の分離 前提条件(入力)と計算式を別シートに
セルの色分け 入力セル:青文字、計算セル:黒文字
1行1計算 複雑な数式を1つのセルに詰め込まない
ハードコーディング禁止 数式内に直接数字を入れない
バージョン管理 ファイル名に日付を入れて管理

よくあるミス

ミス 対策
循環参照 利息計算等で発生しやすい。反復計算で解決
BSが合わない 全項目の増減を一つずつ確認
CFがマイナスなのに現預金がプラス 借入や増資の前提が抜けている
税金の計算漏れ 法人税・消費税・源泉税を忘れない
運転資本の無視 売掛金・買掛金の増減がCFに反映されていない

まとめ

ポイント 内容
基本モデル 3表連動(P/L・BS・CF)
作成の鉄則 前提条件と計算式の分離
感度分析 3シナリオ + 影響が大きい変数の特定
よくあるミス 循環参照、BSの不一致、運転資本の無視
活用場面 資金調達、投資判断、事業計画

財務モデルは一度作って終わりではなく、実績と比較しながら前提条件を更新していくものです。精度の高いモデルは、経営判断の質を大きく向上させます。

NextFin会計事務所では、社外CFOとして財務モデルの構築から投資家向けの資料作成まで支援しています。「モデルの作り方がわからない」「既存のモデルをレビューしてほしい」という方は、お気軽にご相談ください。

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タグ:財務モデリングExcel事業計画3表連動シミュレーション

この記事を書いた人

NextFin会計事務所 税理士

税理士。スタートアップ・成長企業の財務戦略、M&A内製化、資金調達を専門とする。大手コンサルティングファームでのM&Aアドバイザリー経験を経て、NextFin会計事務所を設立。

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